
『説明』
ガラス瓶と人参、上半分が人参に変容したガラス瓶がブロックまたは台(どちらも人為的なもの)の上に置かれている。バックは暗緑色、もう一方は同じ彩色だが連山を見下ろしている。(この連作は4枚描かれた内の2枚)
これを『説明』と題し、また酷似した内容の作品を4枚も描いているらしい。
硬質のガラス瓶と有機質の人参とは明らかに性質の異なるものである。
それが合体する、つまり《等しい》と結論付けることで説明が成り立つ論法はどこにあるのだろう。
物質全部を電子に帰し
電子を真空異相といへば
いまとすこしもかはらない (宮澤賢治『春と修羅』「五輪峠」より)
この考えに近いのではないか、マグリットは『思考の自由』を考えている。積み重ねられた観念・イメージからの脱却を図り、観念を志向の暴力で破壊している。その先にあるのは解放された自由な思考である。
観念の束縛は地球における絶対的な物理法則でもある。しかし、精神はそれを突破できるという信念である。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)