高度成長、バブル…そして今、不況は低所得者層を揺さぶっている。
「もう、人に使われるのは嫌だからな」と電車のホームでつぶやいていた男、見ればまだ五十前後の中年。
「お袋にこれ以上迷惑かけられないしな、『出て行け』と言われればいつでも出ていくさ。生活保護がダメならホームレスにでも何にでもなるさ・・・」
ホームのベンチの男女、どうも兄妹の会話らしい。兄も兄なら、妹も、どこかうらびれて兄を庇護する言葉も掛けられないでいる。寂しく寒風の吹き抜ける年の暮れである。
「マンション、売るんですか?650万はあんまり安いんじゃないですか」と聞くと、
「仕方ないんですよ・・・」と苦笑した近隣の中年男、どこへ行ってしまっただろう。
「今、生活保護の申請をしていますから」と、なにか先行き明るいような表情をしていた男もいた。その後、幾つか働き口を紹介してもらったようだけど、長く続かず、事故の後遺症についての診断を医師に迫っていた。その人も近隣から消えて久しい。
バス停のベンチで隣り合わせた高齢の女性、
「今夕は、息子が来るんですよ」と言うので「よかったですね」と応えると、
「いいえ、わたしの年金を取りに来るんですよ。一緒に暮らそうなんて言っていますが、怖くて同意できません」「・・・。」
少し周辺を見渡しただけでもこの状況である。かく言うわたしも下層生活。倹しい暮らしを甘受している身、他人の事は言えないけれど、先日も友人からの電話で、
「親にもしものことがあれば、負の遺産の方が多くて、この家も明け渡さなければならない」と、告げられ驚愕。
《なるようになる》と楽観視している無職のわたしの展望(?)
迷惑をかけないように身体だけは気を付けて暮らしたい。