うちの前をきっかり12時15分に通る年配者がいる、すでに二年余りは経つ。

 杖こそ無いものの、足元はおぼつかない。擦るようにして歩く前のめりの姿は、とても仕事に行くとは思えない。けれど、毎日規則正しく同じ時刻に行き、同じ時刻に帰っていく様子はまるで勤め人・・・どこぞでパートでも?


 外にいても彼が通ると、(あっ12時15分、お昼なのね)と思う。
 バス停とは逆の道順、(いったい、何のためにここを毎日通行しているのだろう)と思っても訪ねてみるほど親しくない、見ず知らず・・・。
 あるとき顔が合ったので軽く目礼、あちらも返してくれた。

(聞いて見ようかな)いえ々、失礼だわ・・・。


 ところが最近表通りでバッタリ会ったので、思い切って
「おじさん、毎日うちの前を通るけど、どこへ行っているの?」単刀直入に訊ねた。
 すると、おじさんにっこり笑って、
「妻が、そこのホームに入所しているので毎日食事の手伝いに行っているんです。運動にもなりますしね」と言った。
(納得!)

 雨の日も風の日も、規則正しく奥さんの元へ通うご主人。ご主人のほうこそ介助が要るようにさえお見受けするけど・・・。

 老々介護・・・これからの課題である。