何だかひどく疲れて居眠り・・・ふと目が覚めたらすでに五時。

 夕食の支度、冷蔵庫を点検すると、キャベツ、白菜、牛乳、お魚がない・・・買いに行かなくては! (Ah、いやだな)
 夫の夕食には煮野菜を摂るため必ず「一人鍋」をつける、そのため白菜は欠かすことの出来ない食材、それがない!

 やむなく玄関を出た。鬱々とした気分・・・そこに老齢のKさん、自分の家ではなく道路を挟んだ前の家の舗装の隙間に出た草を鎌で除去作業、手に持った袋にはすでに雑草が詰まっている。

 わたしの顔を見ると、照れくさそうに
「これで終わりにするわ」と笑った。(すごいわ、わたしなんかこの時刻にもう疲労困憊。なのにKさんは汗水流して草取り)

 もうとっくに90才を越えているKさん、他所の草取りまでするのを見て、「なんでそんなに元気なの」と訊ねたことがある。
「ここらあたりには世話になっているからねぇ、お父さん(旦那)亡き後いろいろ助っ人みたいな仕事で食べて来たんだよ」といい、感謝の気持ちを語った。

 田植え、草取り、収穫、脱穀の手伝い。夫の給料をみんな畑仕事の手間賃に使ったという地主でもあったSさんは「Kさんに一番多く頼んだよ」と言っていたことがある。

 そのSさんは施設に入っていると聞いているけれど、一つ年下のKさん、まだ他所の手伝いに明け暮れている。
 夫亡き後三億円の税金を払ったというSさん、「旦那が死んでずいぶん経つのに、いまだにお墓が買えないんだよ、なんとかしたいんだけど」とつぶやくKさん。

 いいじゃないの、今がお元気ならば。羨ましいです、とても適いません。