年を重ねる、つまり高齢者に領域に進む。、けれど老いるというより華やぐ人がいる。
「小野元衛」展が、神奈川県立近代美術館の別館で催されている。妹である志村ふくみさんのゲストトークを拝聴した昨日、実にしなやかで美しいその方のお話を伺っているうち(ああ、やっぱり若い頃の精神の基本が軸として動かぬ指針になっている)と察せられた。

「昭和14年ごろでございましょうか、御茶ノ水駅では文化学園の生徒が帰る頃は花が咲いたようだと評されたことがあります。」と。駅は東大生なども合流していたというから、さぞや若い活気に燃え立つような光景だったのではと推し量られる。

 世の中全体が戦争に向かう暗い時代背景の中で、自由を詠った反骨精神はひときわ異彩を放つ存在だったと思われる。銀座を闊歩の楽しい時間を懐かしむように話された志村ふくみさん。あの時代、それを支えて下さった先生方はまさに命がけの思いだったのだと回想を新たにしていた。
 グループの中心だったであろう小野元衛。自由闊達、反骨精神の若者の叫びをごく至近に聞いて大きく胸を揺さぶられたに違いない青春。夭折の悲しみを乗り越えて大切に抱え込むように保存していた兄(小野元衛)の初の展覧会に嬉嬉たる思いを水沢先生に伝えていた志村ふくみさんの上気した笑顔。
 
 染色作家としての名声は聞くに及んでいるけれど、実際にお逢いすれば楽しい語り部。他家で育てられた身ながら、実兄の看病を貫き最期を見届けたのは、やはり尊敬の念、情愛の絆無くしては為しえぬ事。長いこと抱き続けた無念の思いが、形(展覧会)となったことは青天の霹靂だったのではとお察しする。

 年を重ねてなほ華やぐ・・・華美というのでなく資質の持つ艶やかさを垣間見せていただいたこと、うれしいひと時でした。