授業料。

　サークル仲間のNさん、キッチンをリフォームしたという。ところが流し台の高さを８５ｃｍで依頼したにもかかわらず８０ｃｍで仕上がったのを見て愕然としたらしい。
「直すといっても、下駄を履かせるんじゃ格好悪いし・・・」としきりにこぼした。「業者の人はね、『奥さんの背丈じゃこれくらいでしょう』って言うの。それも気に食わないわ」と、きわめてご不満な様子。（彼女は小柄１５０センチくらい）
「でも、うちの流しも８０ｃｍよ、そのうち慣れるわよ」とKさん。

　５ｃｍ異なればさぞかし不自由と同情したわたし、家に戻って自分の家の流し台の高さを測ってみたら８０ｃｍ！（やだ、これって普通サイズじゃない）

　Nさんが利便性を考慮して買い換えた家は中古、前の住人は背が高かったのかもしれない。それに慣れてしまったNさん。

　業者はきっと言っているわ。（あんなに怒っているけど、そのうち感謝するさ）と。


　高価な着物に染みを作ってしまったHさん、「母の作ってくれた着物だから、洗い張りに出して仕立て直してもらったの。そんなにしたのに戻ってきたのを見たらまた同じところに染みがあるの、がっかりしたわ」と言った。

　食べこぼした染みに気付かないで長いことタンスにしまいこんだ後の処置・・・その染みは落ちなかったのね。着物の仕立ては身頃の半分のところにハサミを入れるだけだから、染みの位置は動かせない。全く違うものに仕立て直したほうがよかったのかもしれない。


　日常の不満は誰にでもある。それが大枚はたいた後の憤懣だと本人はさぞかしやるせない思いだとお察しする。


　人生の授業料は、どこかで支払うようになっている。日常生活の勉強は経験あるのみ。