ほとんど途切れることなく、立体的というほどに蝉の鳴き声が周囲の空間に響き渡っている。
 似たような小さな羽音が重なると、強く耳を圧して気が遠くなる心地さえする。

 お盆・・・あの世の人たちが声なき声を発して現世の人に訴えかけているのではないか。そんな想像を可能にする蝉時雨。

 子供のころには7月のお盆過ぎから日参した海にも、8月のお盆のころには水が冷たくなるので、泳ぎには行かなくなり、ただ、ぼーっと過ごしていた夏休み。
 何であんなに何も考えずにぼーっとしていられたのだろう。
 意欲のない子供のなれの果てをいくわたし。

 知らぬ間に64才になるなんて!驚いてしまう。

 人生は驚き呆れるほど短い。青年が隣村に行こうとして行き着かないうちに人生は終わってしまう(カフカ)

 カフカを知った夏・・・それは14才のころだから、カフカとの付き合い(?)も、すでに50年。
 あの蝉時雨の中にカフカがいるかもしれない。でももうあの世に逝けば言葉を持たないから、悲しく羽音を奏でるだけ。

「生きているうち、生きているうちだけなんだよ!」
 そう囁いているのだろうか。