この絵の視点、目の高さは暖炉の上板・・・これは子供の目の高さである。

 マグリット、子供の日の記憶。
 つき刺さるほどの衝撃・・・母親の自殺にほかならないのではないか。

 誰にも踏み込まれたくない内奥の刻!

 持続・・・この衝撃の時刻の持続・・・いつまでも、幾つになっても消えることのない胸に突き刺さったままの記憶。
 鏡には燭台と時計が映るほかは何もない闇。前に壁があるなら後ろにも壁があるはず、何も映りこまない非現実の光景。否、現今の精神的色調かもしれない。

 機関車の煙、燃え上がる炎の突然の静止・・・自殺という事実。

 壁から突き出た機関車・・・ありえない光景・・・ありえないような衝撃の具現化!

 自分の中で止まったままの刻、静かで平和な日常の亀裂は、この視線の高さが示す幼年時代に起きた。
 部屋に損傷はない・・・無垢で傷を知らないマグリットの子供時代の内面そのもの。

 この衝撃の光景を今(画家として)、真正面からでなく斜に傍観している、し続けているといったほうがいいかもしれない。

《この絵を詮索する者をなん人といえども許さない、わたしの心に踏み込むものを絶対に拒絶する》
 マグリットの深い悲しみ、冷徹な眼差し・・・誰にも知られたくない、誰にも理解不能なこの心情を・・・しかし描き止めずにはいられなかったマグリットの原風景。

 冷たい大理石、重い鉄の機関車、鏡、燭台、硬質のそれら・・・。
 まさか、機関車の煙(エネルギーの突然の停止)、生命がフリーズするなんて!!
(燭台の形と床面の木材の年輪は母をリンクさせる共通のモチーフ)