不二家のミルキーを見ると思い出さずにはいられないことがある。

 京急の横須賀中央駅はかなりカーブしているので隙間がある。
 その隙間にすっぽりはまり落ちてしまった妹・・・。
「おーい、子供が落ちたぞ!」
 すでに階段近くまで来ていたわたし、妹がいないことに気づいて激しい動悸。
 酔っ払った父親は自分だけどんどん先を行く。幼い娘二人を連れていることなんかお構いなし。小一くらいだったわたしは付いていくのが精一杯。
(ああ、妹が・・・神様・・)そう思って振り向いた時にはすでに助け上げられていて、駅員さんと手をつないでこちらを見ていた。
「親はどこ?」くらい聞かれたと思うけど、酔った父親はそれすら気づかず、よろける足で先を急いでいる。
 わたしは立ち止まって「お父さん」と呼び止め、妹を待った。
 妹と手をつないたときの感動を忘れていないけど、そのとき後ろから駆け寄って
「電車の下にこれが落ちていたけど」と、ビニール袋に入ったミルキー(飴)を渡された。
 妹を見ると、しっかり持ち手のついたミルキーの箱を持っている。
「いえ、違います」と、その親切に首を振ったけれど、その人は「まあまあ」という感じで妹に手渡してくれた。

 飴は衝撃で箱の底から落下したものだった。
 空箱の軽さにもあまりの衝撃に気づかなかったのだと思う。
 しっかり握ったミルキーの箱の持ち手・・・ミルキーの箱のペコちゃんの顔・・・。
 脳裏に焼きついて離れない衝撃の思い出である。