
『花嫁』
(花嫁)とは結婚式当日のまた結婚したばかりの女性の美称である。美称であり決定ではなく定着すべきものでもない。いわば抽象、浮いた言葉の形容である。決定的なことは女性に限るということで、あくまでも男性につける美称ではない。
タイトルされた作品を見てもタイトルに結び付く要因を見出せない。
鑑賞者は、止むなく無理にも何か(花嫁)に結びつけようとする心理が働く。材質、形容、明暗、脈絡・・・あらゆる既知の情報を駆使し何かに結び付けようと試みる。
自然の理(例えば重力)などの法則、光の方向、光源についての言及・・・すべてが徒労に終わり決定的な証拠が見いだせない。見出せないように苦慮した作画であることの果て。
存在の解放(破壊)であり、空無と換言してもいいかもしれない。
花嫁への複雑な眼差し、女性に限定した呼称であること、このきわめて当然と化した美称への揺れる想い。憧憬を誘うものであるが、漠然とした壁、隔たりとして在る仮称である。
ローズ・セラヴィ(女性)を内在させるデュシャン(男性)の複雑な問いは、上下・左右・奥行きを未知のものとするしかない潜在的な風景の闇であり、有りそうで無い生産性の誘導、立切れた面、筒、線の行方は不明である。決着のつかない不明瞭は『花嫁』を掲げてため息をついている。
写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク・TASCHENより