
箱根の森美術館に関根伸夫の『位相』(大賞作品)が在る。
作家の作品に対する説明を聞いたことがある。手に持った湯飲みを掲げ「これがですね、いろいろな形態に変容するということです」と。
つまりその物質の持つ質量を変えずに外観の様相を自由に変態できるという空想の論理である。
本来の位相とは周期的な現象における特定の局面や位置を示す変数をいい、空間にける連続の概念を提議するというもので、固体と空間との関係性を問うものらしい。
この『溶けた林檎』の変容は明らかに林檎を想起させるべく、形態・彩色を模したもので「林檎」の概念を持続させている。
《林檎である、しかし、林檎ではない》という概念の境界を保ちつつ崩すという手法をとり鑑賞者に問いかけている、と同時に作家自身の内的疑問への答えとしての作品である。
決定ではなく揺れているが、確信を持ち見えない領域を見せている。
写真は日経『境界とは?現代美術で再考』より