目前の空間を測る。
 視野とは異なる視点、経験上の情報と現実に見える視界との接線である。しかしここまで簡略化すると、鑑賞者は物理的な大きさへの展望を危うくする。

 目の前はあくまで平坦に広がり、木々あるいは人(群衆)のようものが点在するが決定的な形を消し感覚的な高低や遮断たる迷路を配置している。まっすぐな道を敷いていない景色である。地下に突き出たものが水脈か過去の遺物の痕跡かは不明である。

 目前の空間は存在する地下の圧(歴史)が現在の空気を巡回させているということかも知れない。水の三態に準じ空間にも循環を感じるということである。
 存在と不在の循環、見えているものと既に見えなくなっているものとの時間。

 自分自身の存在への疑惑は大地の中に埋められ拘束されている。
 本質は見えないもの(空間)とのせめぎ合いに位置しており、観念(情報)は目前の景色に重複せざるを得ない。

 写真は「若林奮『飛揚と振動』展より