
『パリの空気50㏄』
レディ・メイド:ガラス製アンプル高さ13.5㎝、円周20.5㎝
ampoule:注射液などを封入した小型のガラス容器。しかし液体が入っているわけではなく、パリの空気が入っているという。
空気は無色・透明・無味・無臭であれば、パリの空気を証明することは難しい。視覚以外の確認は不可であり、確定は実証できない。地域の確定に及んでは失笑を免れないが、パリで製作されたならそうであるに違いないと言えるかもしれない。地表を包んでいる空気は風によって巡回しているが、パリの空気だと断言できなくもない。
見えない物、不確定なものに対する認識は主観に過ぎず、客観的な認可には条件の不足がある。
しかし、「AはBである」という主張を覆す実証は封じ込められたものにおいては困難である。見えているが認識の条件を満たさないものは特定できない。
にもかかわらず決定し、流布され、曖昧さの壁を乗り越えてしまうことがある。常識、通念として知覚されていく観念的事項の多さは疑念を挟む余地さえ与えない。
不確定の中の歪み、真実と換言するべき事項が隠蔽されている不穏は見えない。ゆえに『パリの空気50㏄』は鑑賞者の脳裏にあるデータに委ねられるものである。
写真は『DUCHAMP』TASCHENよりジャニス・ミンク