
『旅行者用折り畳み品』
Underwood社タイプライターのカバーということらしい。
これを見てタイプライターのカバーだと知るものは少ない。単にカバーの類かという印象である。カバーでさえないかもしれず、黒いビニール製の直方体という認識であるが、Underwoodのネームを知る者にとっては意味の範囲を広げる。
要するに不明なのである。目的、存在意義の明瞭さに欠けるこの対象物(作品)をどう理解すべきかが分からない。《分からないこと》が正解かもしれない。
分からない(見えないもの)の正体はあくまで不明であって色形、メーカーなどのサインから憶測する、或いは直感するものが中に収められているとは限らない。しかし、このカバーを知るものは百パーセントこの中身を断言するに違いない。
この確信めく推定、しかしメーカーのサイン(Underwood)を知らない鑑賞者にとってはヒントにならず単なる文字の羅列に過ぎない。
《確信と不明》の間に位置するという断定の困難な領域がこの世には確実に存在するという証明である。
写真は『DUCHAMP』TASCHENよりジャニス・ミンク