『自転車の車輪』

 白い丸椅子の上に車輪が逆さに乗っている、車輪は車輪の用途を外し単なる(物)と化している。 
 車輪であるが車輪ではない、しかし車輪そのものに見える物である。

 本来の機能を失ったガラクタ(屑)と換言してもいい物を白い丸椅子の上にあたかも捧げ祭っている。オブジェ?否、デュシャン自身の肖像である。

 《わたくし》を眼の前に奉ったのである。自画像、分身・・・機能なき車輪は黒く塗られ白椅子の上に設えられた態は、まるで生と死の間を循環しているようである。

 美しくも密かな葬礼は眺めつくしても見飽きることがなかったに違いない。

 写真は『DUCHAMP』TASCHENよりジャニス・ミンク