重力下に於いて物があることの条件は、床に重心が有ることが必須である。あるいは上部方吊り下げられている場合も例外として在るが、物の重さ(存在)は真下への力が働くのでそれ相応設置が為されなければならない。
『チョコレート粉砕機』を見ると、床面が省略されている、台の足が床面に接しているように描かれているので、床面に着地していると肯定してしまうが、その根拠(景)が欠けている。有るかもしれないが無いかもしれないのである。
上部から吊り下げられている場合を想定してみると、力のもとは細い棒状のものである。これがこの重量を感じる物体(装置)を安定させることが出来るか?という疑問が残り、この絵図が巧みに奇妙であることが判別する。
べたの背景によりこの実態は明らかにはならず、ごく普通の絵図としてのみ鑑賞者に提示される。
これら重力下における不具合は二次元の画面では不明瞭であり言及されることは無い。しかし、デュシャンは凝視を要求している。
《不具合なことが平然となされる場面において、衆目は平然と受け入れてしまい、納得してしまう心理》を言及しているのである。
((見慣れて知っている物に準えたものは見慣れた物に等しい)という心理的傾向への疑問言及である。
写真は『DUCHAMP』TASCHENより