どんな に思い返しても、わたしは激怒したことがない。ただひたすら悲しいだけで口をも目をも閉ざしてしまう。
激怒するほどの自信もなく、そんなもんだろうと諦念する意気地なしである。
激怒の活力って(いいなぁ)と傍観したことはある。目が地走り背中が震えるような全身の怒り。
儀礼を重んじるというのでもなく気弱、逃げの姿勢で人生をやり過ごしてきたかもしれない。
苛立ち、ストレスはあってもそれを怒りに転化することもなくいじけて涙するだけの大人しい人間でしかない。淋しいか? 激怒して疲れ果てるよりおいしい物でも食べて寝て忘れるというパターンを選択する極楽とんぼである。
活力皆無、居ても居なくてもさほど気にならないような影の薄いタイプだから怒りを買うなどということもなかった。けれど、わたしが居るだけで癇に障るということもあったかもしれない。
大したこともしていない人生だけれど、どこかで誰かが猛烈に怒っている気配を感じることも無きにしも非ず、申し訳ないと思う。馬鹿を承知の人生、勘弁してほしいと謝るまでもないちっぽけな類。極小軽薄な人間であります。