ねんねこから片手出てゐる冬霞

 霞が立つ思いがけないポカポカ陽気。ねんねこで防寒している赤ん坊の片手がねんねこから出ている。「北風と太陽」ではないが、暖かさに自ずと出した幼子の手が愛おしい。


 橋に聞くながき汽笛や冬の霧(中村汀女)

 川の向こうから汽笛がきこえる、霧が濃い日の汽笛。
 長いうえにも長く聞こえる汽笛は事故の回避、安全のための警報である。船に乗っているわけではないが、その汽笛の音の余韻に平穏を垣間見る。


 雪山のかへす光に鳥けもの(木村蕪城)

 雪を被った真白の山は神々しいまでに輝いている。この神秘の中に鳥やけものは息をひそめ春を待っ。美観の中の窮乏、哀れ、耐え忍ぶ生命。知恵ある人でさえもこの光と裏腹の酷寒に耐えている。