
『ヘーゲルの休日』
雨傘の上の水に入ったコップ・・・絶対に有り得ない景色である。
第一、開いた雨傘が空中で直立するはずもなくその術もない。さらに水の入ったコップが乗るなど、まるで不条理、自然の理を度外視している。
しかし、現実には絶対に存在し得ない状況を、精神界では創作することが可能である。決して《無い》を《有る》と肯定する。物理界と精神界の競合は常に答えを捜している。
この作品は鑑賞者を不安に陥れ、どこかで均衡を保持しようとする力が働く。
無為の動揺、コップの水に集中せざるを得ない心理的葛藤。
(いずれ落下、転倒は免れない)という観念的な答えは正しい。しかし、この作品世界に於いては落下も転倒も、むしろ有り得ない(全否定)、停止した時間内にあるからである。
鑑賞者は時間の擦過を周知しているが、この不合理を息をのんで認めざるを得ず、作品における《絶対》は精神界の主張となる。
写真は『ReneMagritte』展覧会カタログより