亡き母を知る人来たり十二月(長谷川かな女)

 母を亡くし悄然とした日常に思いがけず母を知る人が訪ねて来た。戸惑っていると、母の昔話など聞かされ思わず胸が熱くなり、その高鳴りは抑えがたいほどであった。
 母を知るその人は訃報を風の噂に聞き急ぎやって来たという。
「どうしても今年の内に貴女のお母さまにお別れを申し上げたい」と・・・。


 行く水のゆくにまかせて冬至かな(鳳 朗)

 水はどこまでも低きに流れ海へ、或いは空へと昇る循環をたどる。行方知らずの水に委ねて抗うことなく素直なままに生きるわたくしではあるけれど、冬至という節目に胸を衝かれる。
 水はまがうことなく流れ、巨きな時空への混在は覚ることさえできない刻みとして無窮の彼方に消えてゆく。
 陽射しが証明する日々の暮らし、極の不安と希望の錯綜に生を委ねているわたくしである。


 なかなかに心をかしき臘月かな(芭蕉)

 臘月と聞けば何やら心が騒ぐ。
 いつもと違う感慨、妖しい心の疼き、正常ではいられないような煩雑さが擦過するのは何故か。
 吹く風に揺れる心の中、受け止めがたく臘月に向き合っている。どこかに残した忘れものはないか、臘月に翻弄され曖昧なままの惑いが胸を痛く刺激する。