冬麗の不思議をにぎる赤ン坊(野澤節子)

 寒い日が続いているさ中、新生児(赤ン坊)の誕生。
 冬うらら・・・暖かい奇跡のような頃合いの喜悦、束の間の陽射し。神々しくも一つの生命の現出である。祝福の冬うららは、きっとこの新しい生命がもたらしたに違いない。


 口に袖あてゝゆく人冬めける(高浜虚子)

 寒い北風、思わず口に手を当てる。袖まであてながら行くというのは余程の寒さか・・・寒さに悩みも混じっているのではないか。背を屈め辛い状況を抱え込んでいる風情にもみえる。
 厳しい冬への苦悶、戦いは始まったばかりかもしれない。冬の予感はまさに人の身体に入り込み現実と化している。ああ、硬直する身体をどう庇おうか、問答無用の冬をすでに心より先に身体が構えている。


 風の日の雲美しや十二月(有働 享)

 強い風の日の目まぐるしいとまで言える雲の変化、急ぎ走るほどに姿形を変えている。曇天ではない、透き通るようなきれいな薄雲は流れを加速する。
 雲の景は自分の心にも等しいと、ふと感じる刹那。全てはこれで良かったのだと無理にも肯定する決済。空ゆく雲も美を以て由とする十二月、(雲美しや)の情感を十二月の充足として刻み、空を見上げている。