冬ざれの厨 に赤き蕪かな(正岡子規)
何処も彼処もまさに冬である。色を無くした冬の景は心まで無彩色の感が漂う。枯れて寂しく頑ななまでに沈んだ空気の鈍重。
でもことあろうか、厨に見つけた赤い蕪のほの温かい彩色に癒される安堵、嬉しいではないか。
小春日やりんりんと鳴る耳環欲し(黒田杏子)
冬さなか、春のような温かいこんな日、わたしの心は祭りである。華やかに踊ってみようか、りんりん鳴る耳環も浮かれ気分に相応しい。
小春日の静けさは胸の鼓動をりんりんと共鳴させる小道具が是非とも必要であるに違いない。
山々に坂が寝そべり冬ぬくし(佐藤和枝)
ああいいな、冬だというのにこんなに暖かくって。
遠くに見える山々もきっと浮かれている、坂だっていつもと同じであるはずがない。暖かな空気に両手を広げ、のびのび緩く寝そべっているのではないか。天地が仄かにも沸き立つ冬の景は悪戯っぽい愉しさに満ちている。