神無月夕日をうけて山坐る(松崎鉄之助)

 出雲以外では神が居なくなったとされる神無月。
 あの大きな夕日までもが神々しくも山にお隠れになるけれど、その巨きな夕日を懐に秘め山はどっかと鎮座している。
 あの山々は崇拝してやまぬ夕日(太陽神)を抱き玄く染まっていく。大いなる神と常に対峙する至福をこの大地(山々)に感じているであろう作者。
 山は厳然と夕日を受領し眠りに就く。


 しくしくと十一月の日ざしかな(後藤綾子)

 心に残る故しらぬ痛み、今年も残り少なくなった十一月の低い陽射しの中で、思い惑う未練をきっぱり捨てるべきか…しくしくと心が泣いている。
 しかし、強く乾いた陽射しの静けさに覚悟するわたくしである。


 跳箱の突き手一瞬冬が来る(友岡子郷)

 跳箱を飛ぶ、飛ぶぞ!の決意。その手を付いた瞬間の刹那、一瞬の慟哭にも似た心の騒ぎ。
 どこかで何かが変わる、緊迫の一瞬、厳冬はすぐそこ、既に今はもう・・・かもしれない。