『室内』

 どうして心惹かれるのか、不思議なこの作品は端的に言えば黒と白、明と暗の配置、構図の妙である。白い画面に、への字(山)型の黒(暗色)が被っている。にもかかわらず起伏よりも平坦、静謐な空気感が漂っている。
 婦人の後姿、首に見える白の一点により暗い中にも立体空間の確かさを示す基点としてこの部屋を際立たせている。

 扉が床面に接している線は確認できるが、女性もしくはテーブルの床面との着地は不明である。実際、扉と女性の位置関係を考えると奇妙な差異があり、彼女は床面より沈み込んでいるとしか思えない奇妙がある。
 ストーブの円形の筒と彼女は一本の線状に見え、画面を区切っており、それが全体の位置関係を曖昧にしている。二枚の扉の面が彼女よりも主張し彼女を隠蔽さえしている。つまり彼女を中央に置きながら存在感を消失させるという謀をきわめて巧みに果たし、彼女を不在であるかの印象を与えているのである。

 明らかに存在しているのに、あたかも彼女を幻影化している妙、超絶な色面配置は全体をモノクロームに抑えたために扉の白が心理的に彼女を消す役割を果たしている。
 作家は確かに存在する室内に現在という時空を消し、新たに偏愛的な時空を生み出している。この空気感を自分の中に惹き入れ執着し私物化した世界を垣間見せている、提示していると言った方が適切かもしれない。

 写真は日経新聞『北欧絵画のメランコリー/十選』佐藤直樹より