『ピレネーの城』 

 幻影である、現実には決して見られない、見ることのできない時空である『ピレネーの城』。

 見上げる構図、人が巨岩石が空中に浮遊(あるいは固定)しているのを見るがその頂上に城があることは見えない。
 巨岩石が浮上する不条理、この幻影の中の時空(精神界)に重力は通用しないのか、しかし鑑賞者は重力圏内にいるからこの亀裂を埋められない。この光景の中に入り込めず、遠景として傍観するのみである。

『ピレネーの城』は《絶対》を覆すものであり、現実の否定は絵空事(空想)として処理せざるを得ない。しかし鑑賞者の目の前に突き出された難問は(あるかもしれない)という時空の制約を外した存在の果て(未来)ともいうべき意味を投げかけている。

 地上に浮遊するものは雲(水の循環)以外にはないという決定的な理。巨岩石にその状況を維持するエネルギーは皆無であれば落下は当然の理である。にもかかわらず存在を垣間見せるマグリットの意図は不条理への挑戦と否定が垣間見せる肯定の穿孔であり閃光(瞬時のひらめき)かもしれない。

 写真は『ReneMagritte』展覧会カタログより