小林昭夫先生が開いたBゼミという現代美術を考えるサークルに参加させてもらったことがある。新しさに駆られたものの、ただ聞いていただけの素人のわたし。
大した感慨もなく隅っこで(ふ~ん)くらいの状況で聞いていたら何回目かに現れた斎藤義重先生は帰り際わたしの傍らで呟いた。
「あなたねぇ、見えないものを見ることですよ」と。
(見えないものは見えないんじゃないの)20才のわたしは困惑した。ただそれっきりの一言。
まさかその一言が、ずっと、何十年もわたしの心の中で響くとは。
先生は何気なくつぶやいたに過ぎなかったかもしれない。けれど忘れられない一言というものは確かに在るのだと今更ながらに実感している。
「ありがとうございました」、時々思い出している。