『美しい言葉』

 三日月の南中、真昼である。
 一輪の薔薇は空に向かって膨張、誇大化している。果たして地面から延びているものか、切り取られた一輪であるかは分からない。

 薔薇は美しい、どんな薔薇であっても美しい。
 美しさは言葉に還元される、理念、観念、思い込み、ずっと昔からのデータの積み重ねからの結論は固定化される。

 揺るぎのない言葉の約束。
 言葉は伝達であり確認である。
 確かに美しい言葉というものはあるが、言葉自体に美醜はなく言葉の実態は常に対象に対する説明である。にもかかわらず、言葉は虚偽をも引き受ける。

 言葉には美醜も善悪もないが対象を装い包み込み、授受する側を惑わせる魅惑ある武器となる。言葉の優位、言葉は美しいかもしれない。

 写真は『ReneMagritte』展覧会カタログより