義兄が亡くなって十日が経つ。
自分を主張することもなく姉弟たち家族が出入りする家の中で静かに笑っていた。趣味は写真で賞を取るほどの腕前であったし、海外との通信も愉しんだ由。洗面所やキッチンの床の張替もプロ級、手先の器用さ技能は間違いのないものだった。
母親の言うことにはすべて従うという風で入院時も頻繁に通っていたらしい。「俺も嫌だからよ、もう行かないんだ」と漏らしたことがある。その後お姉さんにそれを話したら「なに、あの後、婆ちゃんに泣かれて、結局最後まで兄チャン頼みだったよ」という。姉弟たち(6人)親族の軋轢、長男であるばかりの重圧。
どこの家族もそんな風なのだろうか、いつも静かだった義兄の冥福を心から祈らずにはいられない。さようなら、お義兄さん。
かくいうわたしは長女、両親を看取ったけれど、結婚相手は《6人兄姉の末っ子》というだけで即決。細かいことは考えず、拘らないが信条。事の是非は神に委ねるほかはない。