『シェヘラザード』

 アッサンブラージュ、一枚の絵、一つの空間の中に寄せ集められた記号(暗号)のような作品。シェヘラザードらしき王妃の人型は、真珠で模られている。目(視覚)と口(伝達)だけの幽体。

 海山空、自然(現実)の大部分はカーテン(遮蔽)で隠されている。

 馬の鈴(伝承・流言・伝説など)、中央にある水の入ったコップは the other world(異世界)の水平、動かしがたい伝承という意か。破損した石積みの搭からは数多の鳥が飛び出しているが終息の意かもしれない。
 しかし、語り部のシェヘラザードの眼と口だけが生き生きとしている。
 自然(現実)と隔絶された空想の世界、シェヘラザードの語りは未だ続いているようである。

 空想(仮想)と現実の混在、遮蔽(幕)は常に開いている。

 写真は『ReneMagritte』展覧会カタログより