
選集、観念を打ち消す数多の空想。
リンゴは果たして大きいのか或いはありのままなのかを図れない。まして馬が茎先について駆け上がろうとしているなんて図は現実には絶対に有りえない。
軽重、大小、質の変換、彩色の奇妙・・・等々、この画の中でどれを基準に考えればいいのか判断しかねる妙。
際立つ不具合の数々を一つにまとめたマグリットの狙いは何だろう。
各、さように順当でない思考の世界。
見たもの、見えたものは、必ずしも見えた通り、その通りではない。錯覚、倒錯、思い込み、信念は世界を変容に導くことも可能かもしれない。
そうした思い込み拘束は洗脳をすら生み、解放は閉ざされる。何が真理かは言及できず、ひたすら目を凝らすのみである。世界は混沌として在り、『選集』の解は続かざるを得ない。
写真は『ReneMagritte』展覧会カタログより