
『生命線』
生命線とは何を指しているのだろう。
漆黒のバック、片手葉何かに置いている(身体を預け)裸身の婦人。傍らにはライフルが立掛けてある室内。部屋の厚い壁の部分は崩壊し空と海とを見せている。
裸身の上半身は天空の青に染まっている。母なる海の澱みは、深く酷な憂いかもしれない。
裸身…真正直、隠すこと、被うべき事実からの解放を凝視する作家の眼差し。
女であることの意味、生身の下半身は生殖、欲望の対象だろうか。空(自然)に同化していく半身。
ライフルは何に向けられているのだろう、自身あるいは・・・。加か被は判らない。不思議に寂寥感漂う絵である。
本当の彼女、狂気を隠しもち、静かにたたずんでいるのだろうか。
この静けさは恐怖である。
死(ライフル)との接線。密かにも彼女は闘っているのかもしれない、見えない何か。妻であり女である彼女との親密であるはずの作家(夫/社会)との距離の隔たりを描いたのではないか。
写真は『ReneMagritte』展覧会カタログ