『炎の帰還』

 街を席巻し現れた巨大な紳士。帰還、故郷・在野に大いなる巨体を持って帰りついたのである。
 手に持つ薔薇は《愛》の象徴である。愛を持って跪き、街(抱く故郷)を俯瞰している。
 しかし、顎を支える手は敬意・拝礼とは異なり、相手(対象)を探るポーズである。

 紳士(男)の真意は挑戦に見える。大いなる勢いを秘め、相手(対象)に対峙する。敵意だろうか、親愛の告白だろうかは定かでない。しかし男は大いなる意思をもって帰還したのである。

 十分蓄えた勢い(データの集積、見解、思考)を以って世界に挑もうとする姿勢である。(しかし、わたしは基本である《愛/薔薇》を忘れずにいるゆえ決して挑む先は破壊ではない。

 破壊なき攻撃、論破による征服はあくまで紳士的、闇夜の炎としての帰還、挑戦である。

 写真は『ReneMagritte』展覧会カタログより