
『占い』
巨大な鼻が地上に鎮座している。人ではなく貌でもなく鼻という器官だけが独立している。しかも有機的な肉感はなく、きめ細かな光の反射はプラスチックの類である。
鼻、臭覚の感知は『占い』に匹敵するだろうか。
背後には一葉が樹として直立し生えている。距離間を推して図ると、同等かもしれない、この対峙。更なる背後は水平線、船の往来もあり、時間は流れているということである。
そして暗雲。
占いというのは予言、つまり未来をあらかじめ言い当てるということである。
一葉(質の変換)、鼻(質の変換)、水平線(海、水の普遍)、暗雲(空気の循環)、これらが一つの空間に修まる未來の展望。
大地(地球)は常に変革を迫られており、その果てに在るものは既にわたし達の知る物理法則を超越し、人間は人体という組織をそぎ落とし《鼻》という単機能が独立する未來を想定している。
争いや差別のない無機的な世界の眺望は、しかし無味であり恐怖かもしれない。あくまで『占い』である。
写真は『ReneMagritte』展覧会カタログより