
前兆、未来に対する兆しである。
過去はどれほどの時間を有していたのか、知る術がない。戦乱はあったのか、これからなのか。
沈黙しているが、この画には動き出すような活気(気配)がある。静止は平和であるが動き出す気配は必ずしも平穏を約束しない。
洞窟から見る世界。暗く拘束される不自由な社会からの脱出だろうか。きわめて高い山岳の厳しさは豊かな生活を突き放している。夢見る甘さや優美な粉飾などという安穏は微塵もない。
『前兆』は何を示唆しているのだろうか。
《決意》かもしれない。あたかも仙人のような高潔さをもって自身に判断を下す眼差しの前兆である。
おもねることのない思考、純粋な答えを捜すことへの決意。広大な景色を臨みながら、自身の景色に決着をつけるという決意の前兆が垣間見える。
写真は『ReneMagritte』展覧会カタログより