背後霊はいるだろうか?

 Aさんは二歳で母を六歳で父を亡くした。その後は生前父親が迎えた継母と暮らすことになるのだけれど、学校へはほとんど行かずに奉公に出されたという。

「でもね、おっかさんは、わたしが帰ると(給金を貰って)御馳走を作って待っていてくれたんだよ」と言い、若い義母に感謝こそすれ不満をいだくようなことは無かった様子。
 所帯を持ったけれど、子を赤子のうちに亡くし、伴侶も戦後の疲弊で他界。脱穀作業や畑の手伝いで凌ぎ、養子の男の子を育てた由。

「ここ(大矢部)にはお世話になったんだよ、子が生まれたときなんか、大家は一部屋増築してくれたんだよ」と言い、年を重ねてもあちこちの草取り(奉仕)を欠かさなかった。

 そんなAさん、102才で亡くなるまで病むこともなく丈夫、デイサービスに自分の足で通い、わたしが手を振ると「ありがとうよ」と大きな声で応えてくれた。
 ほんの一日か二日、食欲が落ち床に就いたけれど、朝はお茶を飲み、昼に眠るように亡くなったという。

 Aさんの背後霊、よほど多くのパワーを送り続けたんだね、きっと。今頃みんなで笑っているかもしれない。