
『ジョルジェット』
マグリットの妻の名である。
窓外は茫洋とした平穏な海と陰りある室内。
女性は、横顔と斜め前を見つめる眼差しの二態が重なっている。
画面上部に卵、枝葉、下部の隅に鍵そして手紙、彼女を照らす蠟燭の炎、皮手袋、右端には鳥の翅。これらがジョルジエットであると。
愛する妻の肖像、美しく凛とした中年の女性。これだけで充分であるのになぜ補足のように象徴としてのものを配置したのか。
落ちてくる耶の卵…つねに小さな不安を内在している、根拠はわたし(マグリット)に違いない。
緑葉の安らぎ。
鳥の羽の軽やかさ、愛らしさというよりフワッとした存在感。
鍵、秘密。
手紙、言い訳、感謝。
皮手袋はわたし(マグリット)を庇い守る手ではないか。
この大いなるジョルジェット(妻)のお陰でわたし(マグリット)は仕事に没頭できる時間と空間を得ているに違いないという妻への感謝であり、それはあたかも《もの言わぬ海の安らぎ》である。
写真は『ReneMagritte』展覧会カタログより