『人間の条件』

 人間の条件とは何だったのか。
 厚いカーテンを開くと窓外の景色が見える、その景色を画布に写し取った作品。

 鑑賞者はこの作品を見て違和感を抱かざるを得ない。なぜなら決してこのようには見えないことを経験上知っているからである。時空の見え方は遠近法など物理的見地を図るまでもなく体感している。

 この体感的な眼差しをもってすれば、複写された画の虚偽は一目瞭然である。
 にもかかわらず、肯いてしまう。画布によって覆われた景色は画布に遮蔽されない本来の景色と接続を可能にするこの景色で正解なのだと。

 否定すべきこの情景を肯定する感覚があり、むしろ大きく肯定する心理、感服に近い感情に引き込まれる。仮にこの画布に描かれた情景が全く異なるものでも前後左右の画布に接続する部分につながりさえすれば納得してしまうのである。

『人間の条件』とは眼差しには物理的条件に因るものと、精神的条件(観念的)に因るものがあるが、常にその調和を図るものである。

 写真は『ReneMagritte』展覧会カタログより