『告知』

 この全景は何を意味しているのか。
 地上であり、若干雲に陰りがあるが空がある。自然・・・でも違っているのはそれがマグリットの配した概念の産物の創る景色であり、実景ではないということである。

 聳え立つカーテン、馬の鈴の点在・・・口伝、噂、物語。
 紙状のものに刻まれた穴は永遠に連鎖していく時空、霊魂。
 ビルボケ風のものは男女を模しているが、前後がどちらにも見える錯誤を施している。「

 これらに比べ、樹木(自然の風景)は低い位置にあり、ランダムに置かれた石の寄せ集め(塊)は民衆(個々の生活)の形骸化(過去)のようである。

 これらの関係はマグリットの胸裏に深く根付いた思考を換言した光景である。

 人々を圧し被い聳え立つものも又、人々の作り上げた確固たる想念の結末であり今なお支配してやまぬ圧力に他ならない。
 権威、虚実の混沌、歴史を制した思想・・・わたしたちはそれを膝まづいて見ているのだろうか、この不思議な光景は奥が深い。

 写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより