『不穏な空気』

 静かな海、浮かぶ船も人も見えず平穏そのものの景色である。(何もないことが不穏ともいえるが・・・)
 『不穏な空気』と題している、空中に浮かぶ雲に模した三体の意味はなんだろう。
 白い女の身体(トルソー)管楽器、椅子、これらの意味するものは?

 トルソーは有機の肉体ではなく無機の物質であれば、精神界を外れている(死、虚無、形骸)。
 管楽器は此処から発せられる大きな音(命令の発布)。
 椅子は主導の位置、権威の象徴である。

 白く美しく輝く雲の変移(大自然)、置換された内実は戦争(人為)への危機感ではないか、『不穏な空気』は目に見えないが国の上に重く覆い被さるものかもしれない。

 民衆は『不穏な空気』を心のどこかで抱えている、不穏の現出で平和な海を汚さないで欲しい、息詰まる願望に他ならない。

 写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより