『恋人たちの散歩道』

 道というものは地上に在る。しかしこの作品を見るとまず目につくのは空中に浮かぶ二枚のフレームであり、その中の青空である。(雲を描かないと単なる青という色面になってしまう)
 二枚は大きさに少し差異がある、あたかも男女を暗示するような大きさの差異。この二枚が恋人を象徴しているのだろうか。恋人・・・未来を描く夢想でもある。

 散歩道、道を描くときは焦点を暗示するのが常であるにもかかわらず、道というより建物を正面から描いている。しかもどのくらいかは不明だが視線は浮上しており地上からの眼差しではない。

 道を遠近法で描かず、建物(町)に対面している窮屈な空間。背後(空)は漆黒であり、散歩には不向きな時空である。

 二枚のフレームは、単に未来の予想図なのか。或いは二枚は恋人たちそのものを擬人化したものなのか・・・。
 現況に挑む恋人たち(これから新しく家を作るカップル)の困難を示唆しており、フレームの中の青空(平穏・平和)を目指す恋人たちの眼差しを静観している。マグリットの希望である。

 写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより