『蝋燭』

 この作品の怪しさはリアルから来ているというより作家の執念、深淵なる自己との対峙から刻み込まれた情念にある。

 まるで…まるで気配そのものである。対象を写し描くという域を超えている。対話といったレベルではない、殺意さえ感じる気迫が画面を揺らしている。

 にもかかわらず《静謐》そのものなのである。台座(横/水平)にたいする蝋燭の炎(縦/垂直)はごく微妙に傾斜している(ように感じる)、そのわずかな差異に作家の叫びが聞こえるのである。
 胸裏を震撼とさせる超リアル、長い時間(時空)、燃え尽きることを否定するような永遠性、時間の停止に鑑賞者は息をのまざるを得ない。
 忘我・・・作品に呼吸を合わせようとして見えない厳しい壁(境界)に弾き飛ばされそうになる。この作品の朱(赤)は地獄(異世界)の空気感を醸している。
 緊張を余儀なくされる凄い作品である。

 写真は日経『声が聞こえる/十選』山本聡美より