数多の石をコンクリートで固めた壁に埋め込まれた変形かつ切断された肉体は、休憩と言うより《死》であり、あらゆる器官は停止され自由な動向は皆無である。

 軽業師の休憩とは自由な世界から解放(?)された不自由な執着(死)なのだろうか。着衣を脱ぎ捨てた肉体は《生》そのもののような肌色をし丸みを帯びている。身体は若い女性のような(乳房から推して中年だろうか)、恥部さえ隠さない裸身は精神を放棄しているようでもある。

 固い石(無機質)の壁に切れ切れの肉体(有機質)がはめ込まれた異様な有り得ない光景になぜか悲惨さはない。感情が入り込むすきがないのである。
 鑑賞者は傍観するしかなく埋められない隔たりがある。

『軽業師の休憩』は鑑賞者が入り込む余地を与えない。違和感は強い拒否であり、わたくし(マグリット)の世界の扉は堅固かつ非現実な夢想であるという宣告かもしれない。

 写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより