『軽業師の休憩』

 軽業師・・・危険な曲芸を身軽に行う人、アクロバットの休憩。
 室内のようである、開口から覗く景色は青空か海の可能性もあり、この部屋の場所を非現実化している。
 軽業師の身体はバラバラに切り離されて石積みの壁にはめ込まれている。女性を確認できるが、男性の要素もある。
 人の目を欺く技芸は現実と非現実の狭間を往来するかに見える肉体を駆使する。

 本当の自分、実在と不在において疲労困憊の軽業師の身の置き所は生死の境を彷徨しているような錯覚さえ抱く。
 この不明な時空に身を置き休んでいるのはマグリット自身ではないか。女性とみられる頭部にかぶる頭髪は微妙にカツラを思わせるし、男性の胸部(肩)の首に乗る髪の毛も妖しい。

 軽業師の休憩とはマグリットの母恋、夢想に耽り錯綜した時空を描く画家の安息だと思う。

 写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより