『風景の魅惑』

 風景、周囲を見渡す(感知する)ことは通常の行為であり《生きること》そのものである。

 風景、見えるもの、周囲との関係性において人は生きている。特別な関心、凝視を促される光景の魅惑は人それぞれの思い入れがあり、決定的、究極の風景は心の底深くに潜在する原風景かもしれない。
 伝えられない思い、形を伴わない風景への執着は傍らの銃の暗示される生死の境界にあるのではないか。決して踏み入ることのできない風景への憧憬は心をかき乱す魅惑ある異空間にほかならない。見ることの叶わない異空間(風景/世界)への熱望は《無》に帰していく。

 魅惑ある風景は常に凝視を拒み、銃(死)を持ってしか臨むことのできない絶望を境界線とする。マグリットの内なる秘密の鍵は銃(死)を接線とする額縁におさめられた異空かもしれない。
 この静かなる眼差しは空虚しいまでの哀しみであるが他に悟られることは断固として拒む、一人きりの夢想でもある。

 写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより