『発見』

 もの悲しい、ひたすら悲しい覚悟、訣別の作品である。

 マグリット少年の目に映ったものは棺の箱だけだったという母の死。呆然と見つめたであろう棺の木目模様・・・。
 人の死が棺の木目と同化する慟哭。すでに人(有機物質)が霧消していく、無機質となりはて形を留めることのない容赦なくきびしい現実との対峙。

 肉体が木質に変容する酷い変換の想起を受け止めざるを得なかった少年の日の記憶。受け入れ難い母の死の質的変容を描き留めたマグリット、やわらかい心に刻み込まれた残酷な記憶、この幻想から逃れることが出来なかったのかもしれない。誰も入り込めないマグリットの胸裏である。

 写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより