
女盗賊というタイトルだから、黒衣は女であると決めているが、肩のいかつさはどう見ても男である。ウエストの細さは共通であり陰部を囲う金属めいた固定は何を意味するのだろう。
両手は長いが足には膝が感じられず飛行を可能とする尾翼のようでもある。
女盗賊の正体は黒衣である以上に見えず不明な妖しさを纏っている。手で押さえつけている箱は棺(死体を修めるもの)だと推しはかることが出来るが、普通、死者を来世に運ぶのは白衣の天使ではないか・・・あえての黒衣である。
マグリットが常に思い測っていたであろう母の死、亡くなった母との対面は棺の箱だけだったという事実は胸に刺さる。
母の死は、女盗賊に因る謀(はかりごと)だったに違いない、という結論は自らへの決着だったかもしれない。
写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより