『喜劇の精神』

 喜劇(面白おかしく観客を笑わせながら人生の真実を現わそうとする劇)の精神とタイトルしている。
 人型に切った平面(紙)の模様(内部)は任意でありながら、よく見るとどこまでも続く連続(永遠)を内包している。
 斜面(坂)に立ち上を向いて立っているが、片足は床(地面)に僅かではあるがめり込んでいるように見える。足先は下方を向いているのに顔(頭)は上方を向くという紙という素材ならでの隠蔽を潜ませている。
 行動と真逆な精神の有り様。喜と怒、哀と楽のように演じることが常に複合的に内在している喜劇の精神である。

 床面に落ちた影は壁面につながっていない。つまり床面と壁面には深い溝(隔たり)があり、一歩下がれば奈落の底へ堕ちていくかもしれない不安定な位置に脅かされている状況に立っているということである。

 画に凹凸はなく平面を組み合わせているので絶対的な大きさや場所は人型から推測する以外になく、人型も紙(平面)のような素材なので大きさの基準は推しはかれない。
 空間(世界)の大きさに固定はなく流動的な膨らみを隠した鑑賞者の精神に呼応する世界であり、鑑賞者が対峙し答えを見出さざるを得ない『喜劇の精神』である。

 写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより