
天才の顔は白いマスクの石膏像、人(有機質)ではなく無機物である。質の変換、象徴としての天才の顔だろうか。細胞や血脈のない純白の顔は右目と左頬が人為的に切り取られ欠落している。
目は瞑り外界は見えないマスクの表情は静謐であり思考しているようにも見える。
《ように見える》という心理。
すべては心理が作り上げた『天才の顔』である。
周囲は漆黒の闇、板状の長いものは時間を刻むものだろうか、彼(天才の顔)の前にも時間があったということである。時間は漂流する不穏(定め無き混沌)の上に敷かれている、明らかに観念を示すものではないだろうか。
この混沌(乱れた世界)に身を呈し献身した偶像かもしれない。名はなく、時間のなかに刻まれていく歴史の一幕・・・世界は『天才の顔』によって変革をもたらしただろうか。永久なる時間(観念)の一端(過去)に存在した大いなる『天才の顔』には否定も肯定もなく在ったという事実のみが刻まれていく。確かに『天才の顔』は存在したのだという確認であり、深い慟哭(息づかい)がある。マグリットの呟き(告白)でもある記念碑的な作品であるに違いない。
写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより