
『深淵の花』
深層に潜む花・・・葉に包まれた仮想の花である。馬の鈴(噂・伝承・評判)がいくつも集合し花芯を呈している。
多くの思惑、消せない憂いはどこか知れない深淵に咲き続けている。手の届かない自分の意志に左右されない深みに咲く花。疼く悲しみ、希望はなく絶望に似た諦念が膠着する深淵。
払拭することも忘却することも不可能な深さはマグリットに静かに対峙している。状況は言語化できず、形をも伴わない。
球体の奥深い永遠はしかし亀裂がある。破壊されることのない亀裂は精神の傷口でもある。
抱え込んだ「深淵の花」は消えることなくマグリットに寄り添う重い花である。
写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより