『高みへ』のタイトルは無窮を包含する。
 目的ある希望への高みではなく存在そのものへの敬意・畏怖である。

 作品の持つ傾斜の動線(流れ)は鑑賞者を精神的に誘い込むが、物理的には明らかに拒否している。仮に上ろうとすれば滑落することは必至ではないか、石の上部の平面に座ることも困難である。
 全体静かなる揺らぎがあり、崩壊を孕むような圧迫感は否めない。世界の恒久は人為の英知に因りむしろ危ういのではないかという微かな不安の告発を内在している。

 石という硬質の素材を使用し強度の耐久性を誇示しているが、形態の配置、刻んだ角度(作品意図)は、脆さを秘密裏に醸している。言い換えれば世界の有り様であり、不安の内在する平穏な景観である。

 写真は日経新聞『対話する野外彫刻・十選』西山重徳より